テニスの試合を観戦していて、「今のプレー、どうなってるの!?」と目を疑うような瞬間に出会ったことはありませんか?
先日、ある試合を見ていた時のことです。相手が放った強烈に鋭角なアングルショット。それを必死に追いかけたプレーヤーが、コートのはるか外側でボールに追いつき、見事な返球を見せました。
しかし、そのボールの軌道をよく見ると……なんと、ネットの上を通過していないのです。
ネットの真横を、地面スレスレの高さで通り抜けて相手コートに突き刺さったそのショット。「今のってルール違反じゃないの?」と一瞬疑問に思った方もいるかもしれません。
今回は、知っていると観戦が100倍楽しくなるテニスの意外なルール、通称**「ポール回し」**について解説します。
テニスのルールが認める「意外な返球」
結論から言いましょう。テニスにおいて、ボールは必ずしもネットの上を通過する必要はありません。
「テニスはネット越しにボールを打ち合うスポーツ」というイメージが強いため、意外に思われるかもしれませんが、国際テニス連盟(ITF)の規則第25条「有効な返球(Good Return)」にはこう記されています。
ボールがネットポスト(支柱)の外側を通過して、相手コートに入った場合は有効な返球となる。
つまり、ネットの上ではなく「横」を通っても、最終的に相手のコートに入れば、それは立派なポイントになるのです。たとえボールの高さがネットより低い位置を通っていたとしても、外側さえ通過していれば全く問題ありません。
通称「アラウンド・ザ・ポスト(ポール回し)」の凄さ
この、ネットの外側をぐるりと回して入れるショットは、テニス界では「アラウンド・ザ・ポスト(Around the Post)」、日本では親しみを込めて「ポール回し」と呼ばれています。
このプレーが「幻の神ショット」と呼ばれるのには理由があります。
まず、狙って打てる場面が極めて限定的です。相手のショットが鋭角で、自分がコートの遥か外側まで追い出された時にしか、この「通り道」は現れません。 さらに、ネットという障害物がない分、直線的に打ち込めるメリットはありますが、コートのサイドライン際という非常に狭いターゲットにボールをねじ込む、極限のコントロールが要求されます。
ピンチがチャンスに変わる、究極のカウンター
「ポール回し」が繰り出されたとき、会場は一瞬の静寂のあと、爆発的な歓声に包まれます。
なぜなら、このショットは「究極の逆転劇」だからです。 鋭角なショットを打った側は、通常「これで決まった(エースだ)」と確信しています。その油断を突くように、コートの外から弾丸のようなボールが真横から飛んでくるのですから、返球するのはほぼ不可能です。
守備から一転、一撃でポイントを奪い去る。この爽快感こそが、テニスというスポーツの醍醐味と言えるでしょう。
次回の観戦がもっと面白くなる!
テニスは、決められた白線の中だけで完結するスポーツではありません。 コートの外側の空間までも味方につけ、3次元の立体的な戦略で戦う。そう考えると、あの四角いコートがもっと広く、自由な場所に見えてきませんか?
次に試合を観る時は、選手が大きくサイドに振られた瞬間に注目してみてください。もしかしたら、ネットの概念を覆す「幻の神ショット」が目撃できるかもしれません。

